溶ける
ノートパソコンが溶けている
不可解な現象
キーボード、〔J〕を押す
ネチョ、とした感触
糸を引き〔J〕は、〔I〕に見える
いつものオフィス
気怠い午後三時
定時まであと二時間半
画面にはエクセル
朝から作った、明日の会議資料
数字が、ぼやけて浮いている
指で擦る
粘土のように、滲む数字
これは夢に違いない
トイレに行ってこよう
戻る
自重に負けたのか、更に歪んでいる
いったん閉じよう
そっと、たたむ
溶けたチョコレートのような感触
そっと、そっと
指が、黒くベタつく
まわりを見回す
いつもの風景、誰も騒いでいない
窓側に座るG課長と目が合い、そらす
Aさん、明日の資料見せてよ
はい、G課長
メールします
仕方がない、もう一度
そっと、ノートパソコンを開く
もはや原型をとどめていない
崩れかけた画面と、溶けたキーボード
、、、かろうじて
G課長にメールする
おい、Aさん
何だよ、この資料
ちょっと来て
気のせいか、G課長が溶けて見える
この計算式、まずがっていびよね
はい?
だびょり、、、
G課長は、
そのまま溶け、崩れてしまった
オフィスのあちこちで悲鳴
Aさん、なんてことするんだ!
え?
誰か、警察に電話して!
全員がこちらを見ている
ひとまず、逃げよう
パトカーのサイレンが近づいている
部屋を出て廊下を走る
エレベーターのボタン押す
グニャ
え?
エレベーターはきたが
半分溶けている
階段だ!
5階から1階に降りる
どんどん、階段が溶けていく
かろうじて1階へ、正面玄関を出る
周囲は警官が囲んでいる
止まりなさい
いや、あの、何もしてません
と
本社ビルは、溶けて崩れた
え?
退避、退避!
警察も何処かへ行ってしまった
呆然と周囲を見回す
道路が溶け出し
周囲のビル街が瞬く間に溶けていく
しばらく立ちすくむ、理解出来ない
パンッ
ライフル弾がおでこに当たる
全身、撃たれるも
全て、豆腐ののように溶けて崩れた
ああ、機動隊が来たのか
しばらくすると
戦車隊の一斉掃射が始まる
全て、効かない
溶けている
次に、交渉人が現れた
完全装備で近づき、話し出した
わらわえは、はなさし、、、
直ぐに、溶けて崩れた
上空で戦闘機の集団が見えた
全て、溶けて落ちていった
夜、見渡す限り
溶けてしまった街中で
一人、三角座りをして頭を伏せている
これは夢に違いない
早く覚めろ、覚めろ
地面が緩み続けている
地球が
溶けるのも、あと少し
いや、次は太陽系
天の川銀河、まだまだ続く
夢は、覚めそうにない
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