空を失くすとき

甘いだけの菓子
真実をつたえる無言電話
わたしの生きていた街の残骸
山からおりてきた猿と同様の性交体験
交差した縄を軽快に跳びこす児童
健康のためなら死んでもいいという老人
下の口から排泄されたような言葉を浴びせられる娼婦
なにも育たない畑に鍬をさす農夫
怪獣に踏みつぶされた遺体の特殊な埋葬方法
自由を美化する風潮と春先を謳歌する紋白蝶
螺旋状に昇ってゆく龍から剝がれた鱗のグラム価格
墜落して足を欠損した天使と義足の干渉する部分の痛み
そういった世界中のあらゆる色を混ぜたんです
そうしたら小学生のころに家族と潮干狩りをした海の色になりました
浜辺には小さな蟹がいましたが怖くてさわれませんでした
そこにひとり残されたわたしは
寝具にされて売り叩かれる空を眺めていました
すぐにたくさんのお金が振りこまれて
空は失くなってしまいました

投稿者

茨城県

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。