幼女に宿るもの

幼い日
家の庭が宇宙だった

蟻やカマキリ
蛙やトカゲ
その動きに
気持ちを踊らせ
手でつかまえ鼓動に触れた

蜘蛛の巣を見ながら
ムシロに寝転がったバラックの屋根裏

釘の抜けたトタンの穴から差し込む光

好奇心だけで動いていた

歓喜
慟哭
怨恨
激情
快楽
安穏

すべてが
小さな身体の奥に
丸く眠っていたことを
いつ知っただろう

友人 恋人 仕事 家庭

執着したこと

情で盗ったこと

衝動で
そうせずにはいられないこと

幼い少女が
動くものを
反射的に捕まえた日

その感情は
どのように
いくつ育ち
どこまで変容した?

素直に大きくなったもの

棘がとれぬまま潜ったもの

消したつもりが
異形に育った黒いもの

昇華され
神々しい輝きを放つもの

私はいま
上澄みをすくいながら
愛しいものたちの姿を写し
裏書きをしている

投稿者

神奈川県

コメント

  1. 人は、多かれ少なかれ、同じような記憶、苦みを、欲望を、歓びを、好奇心を、抱いて生きてきたのだと思います。そして、上澄みをそっとすくう。上澄み、という表現に惹かれました。

  2. 無垢なものに眠っていたグレイなものが読み進めるほどに濃くなっていくように感じました。
    グレイはパーソナルカラー診断ではどのタイプでもニュートラルであれるそうです。

    美しい陰陽を思いました。

  3. 長谷川さま
    大変遅くなりすみません

    はい
    生きているといろいろな思いがあるものですね!
    そのひとによって違う風景が見えるでしょう

    ほめてくださり嬉しいです

    コメントありがとうございました^_^

  4. たちばなさま

    またしても大変遅くすみません

    色のイメージを作ってくださり嬉しいです
    グレーはニュートラルなんですね!
    子供のころのもやのかかったような風景が浮かびます

    コメントをありがとうございました♫

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