さよなら、月の海
その大きなクレーターのまんなかで
大の字になった私は
地球に
あなたがいることを想像している
安心してくれ
地球の常識じゃ女は男を作るらしいが
ここは月だ
それとも残念なのかな?
月の海には水がない
というより
地球には海がある
そこから生き物が産まれたという
私は私のことを
地球のならわしにならって
ウサギと呼ぶ
u-sa-gi
そして草を求めて地面を嗅ぐ
空を耳で撫でる
花と呼ばれる星を呼び
ひげによって地球からの電波を受け止める
何故か?産まれたからだ
ここも海だから
不思議なことは別にないだろ
突然の生命体、u-sa-gi
私はあなたの夢を見ている
私の心を夢見ている
私があなたを見詰めている時
私は月に産まれたことを知る
二度と帰れないふるさとを思い出す
決して触れられない禁忌を理解する
さよなら、月の海
そして永遠に戻ることのない私の時間
私は地球におらず
あなたは月にいない
そして私とあなたは
光年の距離を越えて
なにかよくわからないものがある
とまるで
はじめてのように目を凝らす
星に
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