隠れた牙

教室には白い声が張り付く
「あれはひどい」と誰かが言う

画面の向こうで誰かが泣き
こちらでは正義が静かに拍手に揺れる

「君もそう思うよね?」と笑う
その目に、かすかに牙が光る

気づかぬまま、うなずいた
その瞬間、自分の毛が黒く染まった

「あれは間違い」と声を上げた
その声が誰かの世界を揺らしていた

友の牙と、自分の牙が
同じ方向を向いていた

交わる瞬間、血の色ではなく
互いの影の色を知った

白いと思っていた毛並みは
もう、どちらにも残っていなかった

投稿者

兵庫県

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