自動人形(ドードー)
単に、ドードー、と
それは呼ばれることになった
“感情”を機能として備えた
ぬいぐるみやマネキンの形の
自律式の機械
初めは一部の大人の
夜の相手に選ばれた
それからメイドとして家庭に入り
大事な後継ぎの面倒を看ることになり
ペットの世話も得意だった
擬似的な家族として
機能不全家庭に”配属”されることも
元々がAIなので
間違ったことを何度でも
繰り返し彼らに教えてくれるのだ
無償の愛で
そしてその日は来た
ごくごく普通の社会人に育った
大事な”兄弟”を守るために
彼はその”機能”を最大限発揮した
誰にも命令されず
朝起きて皆にパンを焼くように
不貞を働いた男を殺害した
自分の意思で
ついうっかり、やっていいものかと
彼はにっこり笑った
それから泣いている兄弟を抱き締めて
優しい言葉を掛けた
司法機関が長い時間をかけ
莫大な費用を払わせ
兄弟をセカンドレイプすることを
彼は見越した
その男が彼を見てポンコツと嘲笑った時
こんな日が来るだろうと思ったと
世間の人々は
この事件を天気予報のように聞き流した
実のところ
ぬいぐるみがいじめっこを殴り
マネキンが芸人の衣装で人を笑わす
日常茶飯事だった
殺された男が代議士の息子でなければ
話題にもならなかったことも
付け加えよう
自動人形(ドードー)
と彼らは呼ばれるようになった
次第に人の形を忘れ
機械の精密さを残したまま
ドードーとしてよみがえり
小さな女の子たちの
大事な秘密を守るようになった
殺戮人形
と学者は書き直したが
別に怖がってはいなかった
ただ
愛って
命って
こんなものなんだな、と
微笑んでくちばしを撫でた
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