浄水場のある街

弟の息遣いが聞こえる
浄水場のある街に
敷設された線路を
今日も走っている
誰よりも足が速くて
誰よりも
列車の真似が上手だった

弟は皆から
関口さんと呼ばれていた
だからわたしも
関口さんだった
他の関口さんにも会いたくて
手紙を書く
数日後、わたしからの
手紙が届く
関口さんがほんの少し
わたしたちと重なる

警笛が鳴り響く
何度も何度も
弟が泣きながら
練習していた音
けれどその音色だけは
いつまでも
幼いままだった

投稿者

コメント

  1. 私は身体障害者になりましたけども。
    弟は 「ひーろたん」です。
    いつも、 「幼いままだった」子供です。

  2. 広々したところでの警笛の練習の音響効果も生きていると思いました。
    一番良い箇所は、場面展開で使える関口さんと警笛の関係性が普通は
    ロジック的には起承転結していくのにそのへん気にせず言い切ってる
    最後まで続くある意味、詩作に対して、ともに歩く姿すら感じました。

  3. @北杜アトム
    北杜アトムさん、コメントありがとうございます。
    私は弟で、たーちゃん、です。

    弟でしか感じられない感情があるように、兄でしか感じられない感情もきっとあるのですね。

  4. @足立らどみ
    足立らどみさん、コメントありがとうございます。
    起承転結は確かにアレですね。作ることが苦手なのか、意図的なのか、今、私の中で審議中です。

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