ひとりで呑む酒は
寒い言うから服着せたら暑い言うて
暑い言うから脱がしてみたら恥ずかしい言うて
言葉だけじゃ不満で体を欲しがるくせに
体だけじゃ不安で言葉を欲しがるなんて
なんちゅうわがままでかえらし女や思うには
それ以外の理由がようさんあったんちゃうやろか
今となっては肝心のそれは忘れてもうてるあたり
人生っちゅうのはほんま滑稽なもんやわ
ひとはひとりでは生きられんくせに
ひとはひとりになりたがったりするねんな
そやけどまたひと恋しいなってはひと探す
太古の昔からひとはそうやってくっついたり離れたり
文句言うたり求め合うたりないものねだりをしながらも
そんなんばっかし繰り返してきたんやろな
半径何メートルかの狭い空間が世界の全てで
意味のない話をいつもいつまでも飽きもせず
意味のある話のように有難がっては真剣にな
過ごした時間がわれわれにもあったんやろな
映画館で切ないの観て泣いて泣いて泣いてから
ハンケチ忘れたとはなにごとぞって知らんがな
ほんならもう鼻水もろとも垂れ流しときいな
こっちはこっちでいろんな言葉や態度が今さら天唾で
空見上げたつもりが顔じゅうべちょべちょんなってもうて
どないもこないも切なすぎて笑いが止まらんねんわ
まあ言えば売り言葉に買い言葉かもしらんが
ああ言えばこう言うてしもて結局は
うんともすんとも言わんで終わる
油断してたら言葉はいっつも嘘になる
つうと言えばかあと言うてくれるんなら
阿吽の呼吸にもう言葉はいらんのんとちがうか
ほんで終いにはな
XからXXと戸惑いもしんとな
XXXでは飽き足らんとXXXXXか
そらよろしな
ほんまそらよろしな
コメント
矛盾だらけの感情、齟齬ばかりのコミュニケーション、人生とは二律背反をどう受け入れるかってことだと思いますが、コテコテの関西弁のおっちゃんが真理のようなものを語るのが、すごく腑に落ちるのが面白い。よろしわ。
トノモトショウさん、歳を重ねるほどにほんと人生って滑稽だなぁと思うのです。初めは標準語で書いてたのですが、途中から関西のおっさんが憑依してきたので、全編おっさんに任せることにしました。そうする事で受け入れ難くなる部分もあるでしょうが、それくらいが丁度良さげです。かね。
関西弁で書いて正解だったかなと思います。この詩を標準語で書くと、より苦みが増します。関西弁の柔らかみが、苦みを、潤い、切なさにとかしている。…Χの箇所に、どんな言葉を当てはめましょう。
長谷川さん、ありがとうございます。
やはり、全編おっさんに任せて良かったようですね。
おっさんが憑依したあぶくもさん!
おもしろいです!
客観的に書き手が書き手自身に言い聞かせている様にも感じました。
読み手が読み手自身に言い聞かされている様な感覚にも。
たちまこさん、よくよく考えれば、「作者かて十分におっさんやないか!」とおっさんから反撃されて顔を赤らめてしまいました。
あのおっさん、自分やったらどうしよう…(^^)
そうそう、感じて頂いた通り、多かれ少なかれ、おっさんなんてだいたいが自分に言い聞かせてるようなもんだと思うのです。
あ、これはおっさんディスりじゃなく愛です、つまり自己愛。