待ち合い

気がつけば
大きな病院の待ち合いに
居る
いつから
ここで座っているのか
記憶がない

午前中は
たくさんの人で溢れかえる
午後から少なくなり
夜は、誰もいなくなる
ずっと
一人で座っている

誰からも声をかけられず
声をかけることもない

何故、ここに座っているのか
呼ばれるのを待っている
幾日、幾月、幾年と
誰かを待ち続けている

待ち合いのロビーには
グランドピアノが置かれている

ガラスの天井から
月の見える時
人のいない
ロビーでピアノを弾く

たどたどしい
戦場のメリークリスマスの
旋律が
待ち合いに響く
夜が明け
再び、待ち合いに座る

ある夜
ピアノを弾いていると
初めて声をかけられる

少女はいう
美しい音楽ね
ああ、そうだね
いつも、あなたが弾いているの
ああ
私ね、ずっと入院してるの
でも、もうすぐ終わるみたい

ああ、そうみたいだね
あなたは誰
わからない

お迎えって、あなたなの
わからない
ふーん
少女は消えた

ある夜
ピアノを弾いていると
少女が現れる
私、もう行くから
ああ、そうだね
あなたは、ずっと
ここに居るのね
ああ、そうみたいだね
さようなら
さようなら

そうして夜が明け
少年は
再び、待ち合いに座る
誰かを
待ち続けている

投稿者

大阪府

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