水羊羹

頬杖をついて
窓から夏が終わる頃の風
リモコンが息絶えた
まだ若かったのに
もうチャンネルを
変えることもなくなった
言葉にすれば
命は軽くなる
そんなことばかり

いただいた水羊羹が
消費期限を過ぎて
冷蔵庫で冷えている
ふとした拍子に
その行く末が
心配になるけれど
そのような時はいつも
冷蔵庫からも
心臓からも遠い

透明な選挙カーが
透明な候補者を乗せて
目抜き通りを走る
連呼する名前は
さよなら
誰にも届くことなく
夏の夕暮れは
水羊羹の中へと
滑り落ちていく

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コメント

  1. 頬杖をついて
    窓から夏が終わる頃の風
    リモコンが息絶えた

    冒頭の滑り出しが 絶妙で、映像がこころに映し出されました。

    水羊羹の、感覚の質感(クオリア)が、この詩全体を支配(あえて支配と書く)していて、なんだか おいしい感じもします。
    消費期限を過ぎて
    冷蔵庫で冷えている
    というところも ミソですね。

    水羊羹でしたら、少し位ならば、消費期限が過ぎてても、私なら頂いちゃう だろうなあ、とも思いました。ふふ。

  2. >水羊羹でしたら、少し位ならば、消費期限が過ぎてても、私なら頂いちゃう だろうなあ、とも思いました。ふふ。
    そういう問題じゃあ無いのだけど。ふふ。

  3. >言葉にすれば
    >命は軽くなる
    という言葉が特に刺さりました。

  4. @こしごえ
    こしごえさん、コメントありがとうございます。水羊羹、好物というわけではないのですが、時々、無性に食べたくなります。まさに、あの、質感、ゼリーでもない、羊羹でもない、あの質感が恋しくなります。
    ちなみに、こしごえさを、賞味期限は大丈夫ですが、消費期限はダメ!絶対ダメ!
    ちょっとお母さんになった気分です。

  5. @たかぼ
    たかぼさん、コメントありがとう。
    何と言えばよいのかわかりませんが、書く者として命に驕りはないか、自問していきたいと思います。

  6. 水羊羹 良いですね。
    私自身は氷羊羹のレシピを30年間考え続けているのですが
    無理しないで水羊羹からはじめればよかったのだなと思う。
    なんだか、少し楽になれました。ありがとうございました。

  7. @足立らどみ
    足立ラドミさん、某所でもコメントありがとうございます。
    ネットで調べてみると氷羊羹なるものが散見されました。
    でも、なんとなく、らどみさんのイメージしているものとは違う気がします。
    氷羊羹、くまもんに食べさせてあげたい、、、

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