球根

工事野帳の件で
佐々木が訪ねてきた
お礼に、と
土産の印度煙草をくれた
煙草は吸わないが
絵柄が気に入って
机の上に飾った
仮換地の揉め事に
鬱々とした気分だったので
良い気分転換になった
翌日、同期の明石が
どうせ吸わないんだろう
と煙草をポケットにしまった
替わりに球根を置いていった
綺麗な花が咲くそうだ
午後になると
育てる土もなかった

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コメント

  1. 淡々とした語り口と、展開する場面。何気ない日常の描写のようで、入れ替わるアイテムがわらしべ長者のようでコミカルさもあり、素敵だなぁ、と。

  2. うわ、なんかよいですね。漱石的な「吾輩は猫である」的な文体から始まって、煙草のかわりに球根をおいていくという「夢十夜」的な展開になる。今どき、明治や大正や昭和初期の文豪のリバイバルが形になるとも思っていないんですが、これは見事に文学のエッセンスというのを形にしている感じがします。いつもの「たもつさん」流のファンタジーが帰ってきたようにも見えますし、ただではそこには帰らないぞっていう気概も見える感じがします。

  3. @汀尋(ていじん)
    汀尋(ていじん)さん、コメントありがとうございます。わらしべ長者、懐かしいな。大好きな話でした。確かにそんなテイストの詩ですよね。
    最後、もっとわらしべ長者風にしてみました。

    工事野帳の件で
    佐々木が訪ねてきた
    お礼に、と
    土産の印度煙草をくれた
    煙草は吸わないが
    絵柄が気に入って
    机の上に飾った
    仮換地の揉め事に
    鬱々とした気分だったので
    良い気分転換になった
    翌日、同期の明石が
    どうせ吸わないんだろう
    と煙草をポケットにしまった
    替わりに球根を置いていった
    綺麗な花が咲くそうだ
    午後になると
    総務の人が
    育てるのにどうぞ、と言って
    鉢と土を買って来てくれた
    お駄賃に貰って行きますね
    そう笑いながら
    球根を持っていってしまった

    お粗末さまでした

  4. @大町綾音
    大町綾音さん、コメントありがとうございます。気概というより、欲張りなので、手当たり次第、といったところです。
    まだまだ、ゴリゴリのファンタジーだって書きます、多分。
    漱石、大好きです。そんなに量は読んでいないのですが、三四郎は四巡目にはいりました。

  5. @たけだたもつ さん、そっと最後に総務の人を付け加えることができるのが、すごい^^

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