たけのこ剥ぎ
商業高校を卒業し、同級生の友人と初めて大阪を訪れた。難波の戎橋から巨大なグリコの看板を見上げたり、フグで有名な「ずぼらや」でフグ刺しを初めて食べたりと、お互い就職し自分で稼いだ給料を自由に使える身分となり、浮かれていたのだ。今ではあまり見かけなくなったが当時、立て看板を持った「サンドイッチマン」と呼ばれる怪しげな店員に声を掛けられた。「3000円ぽっきり」と表記された手書きの文面は、若い私の性欲を過剰にかき立てるには十分だった。友人と二人でいたため友人を待たせるのは申し訳ないという大義名分を全面に出し、渋る友人を強引に誘い店内に案内してもらった。室内は真っ暗だったため、煙草に火をつけ店内の様子を探る。ソファーとサイドテーブルのみの殺風景な作り、そんな印象であった。風俗初体験だったため、それがどういうサービスを受けられるのか,わからないまま女性店員が現れる。「3000円でおさわり、5000円で手でサービスします。それ以上はね」とサービスに応じて金額を吊り上げる、いわゆる「たけのこ剥ぎ」というシステムだったのだ。看板に偽りありと思いつつ、「そんなにお金ないよ」と伝える。「じゃ、友達からお金借りてきてあげる」と女性店員は席を立ち友人の元へ行く。危機を感じつつも、ここは最低限の出費に抑えるのが得策だと思い再び席に戻った女性店員に5000円のサービスのみリクエストした。小学4年から床に股間を擦り付けると気持ちいいという快楽を数年間続けていた私の包皮は、膨らます前の風船の吹き口のように、包皮が伸びきっていた。そのため当時の私は酷く皮の被った包茎であったため、包皮を向くとなんとも言えぬ悪臭を放っていた。女性店員より「臭いよ。お風呂入ってる?」と言われつつも一矢報いた気になった。サービス終了後、友人との待ち合わせ場所、場外馬券場「ウインズ」にて再会した。友人はひどくふてくされていた。どうも友人は私からお金を貸してと女性店員から言われた事を鵜吞みにし、現金を渡したそうだ。友人は計15000円の出費だったが口腔のサービスを受けたそうだ。暗順応で目が慣れ女性の容姿を見るとおそらく40歳前後の風俗嬢であり、お互い後悔の念のためしばらく険悪な雰囲気となった。数年後、梅田にある「大関将棋土道場」という懸賞詰将棋の大きな看板の前の通路でその友人とお互いに「あっ!」と声を上げた。18歳の春、初の風俗体験をした女性店員の甘ったるい香水の香りがしたのだ。「あの人も風俗嬢なんかな?」とお互いに笑いあった。
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