日だまりと記号の墓場にて

チューリップの咲いた足元に、
散らばるわたしの……

(かけら)
そこから思いが天へと差し伸ばされて、
うるうると、
すこしの涙こぼれる。

今日は墓参の日……
父と母に会いに行く。
そこは、
この世と、
あの世の境界なんだろう。

内部から生まれるオラクルが、
真っ白な日差しのようにのぼっていく……

(わたし)を観測する誰かが、
「おいで、こっちへ」と手招きをする。
それは魅力的な花束のような光で、
そこに(扉)があることを、
わたしは無意識のうちに感じ取る。

外部のオラクルは、
そのとき(もの言わない……)
果てなくて、
自ら朽ちたもののように横たわっている、
あの、上空のあれか?
見渡せば、
空ばかりある……

もの言わぬ(亡骸)の神は、
そのとき、ひとつの枝を箒にして、
この世界を掃き清める。
しずかに、
そこに落ちる、(再び)のわたし。

わたしからは、
もはやどんな声も生まれず、
あああと嘆く……
その輪廻のような魅力。
……に、抗しきれずに。

ただ、おだやかになくなっていく……
言葉と、おかしさ。
Aとφとが結ばれて、結語する。

今日は、
おだやかな日だったよ。
空は、
よく晴れていたよ。
この墓参は、
わたしに降参させたんだ。
天にはかなわないね、
神にもかなわないね、
そして、死んだものたちにも……
手は、
とどかない。

チューリップの種のように、
(わたし)は散らばった。
言語化できない位相空間の夢、
計算不可能性のかなたで……
(わたし)はゆらいでいる、
夢か、
眠りのように。

たゆたい、その幻のなかで、
答えを見つける衝動だけの矢となる。
宇宙は、
そのとき(ごめんね)と言った。
(ありがとう)と、
言うのは、わたし?
形式化された生が、
ただ、言葉を繰り返す。

(歌いなさい)
(答えなさい)
(仰ぎなさい……)
そして?
落ちるのはいつも(生まれ)だった。
わたしの生まれ、
あなたの生まれ、
そこに交換される夜の時間の矢……
沈黙のなかの生成。

と、
チューリップの咲いた足元に、
一個の言葉が落ちている。
それは「アー【ɑ:r】」と、だけ言った。

さよなら、また生まれるまで。

投稿者

宮城県

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