余白

平日の遊園地は
あなたの名前なのに
石鹸の金魚は泡になった

トウキビのような匂い
私小説ばかり書いている友人が
家に遊びに来たことがある
余白はどうしているのか聞くと
その問には答えず
友人は余白を作り続けていた
雨が降り始める日の
前日のことだった
あなたと出会う
ずっと前のことだった

観覧車のゴンドラが
目の前の停留所にとまる
指先が触れそうになり
慌てて係の人にお辞儀をすると
景色は少し湾曲して見えた

売店のキャンディーが
徐々に色づいていく
閉園時間が過ぎれば
遊園地もまた
泡みたいに終わる
家族のような人たちが
小さな乗り物に手を振っている
行くあてもないはずなのに
いつまでも振っている

投稿者

コメント

  1. ぐるぐると夢をみているような錯覚がして、不思議な気分になりました!
     …たまに小説を読んでいると、たしかに記号や文章って、記憶を呼び起こしてくれるんですが、情景というものは、”余白”の部分で見ているような、そんな感じがするなと思うことがあります(笑)。
     そこで感動をしたり、はたまたそれが作品になったり…「余白」を読ませていただき、そういうことを思い出しました。面白かったです!

  2. 遊園地は閉園時間が一番似合っていますよね。

  3. 二連目、余作と空目してしまいました(「余作はどうしているのかと~」)。
    しゅわしゅわの泡で作っていく額縁、がすべての出来事なのかもしれない・・・
    お祭りのあとのしんみりしているようで
    実は最初から何もなかったような、どこにもある旅愁を感じました。

  4. 暮らしが余白になりつつある私にはしんみりする詩でした。
    遊園地は閉園時間の直前が少し哀しくて好きです。

  5. @「寤寐」
    「寤寐」さん、コメントありがとうございます。
    情景というものは、”余白”の部分で見ている
    言い得て妙、という感じがします。本の余白、って素敵ですよね。文字の並びとのバランスとかが良いとなおさら素敵。

  6. @花巻まりか
    花巻まりかさん、コメントありがとうございます。
    まさにそのとおり、わかっていらっしゃる。若かりし頃、口説くのに夕方の遊園地に誘ゴニョゴニョ

  7. @kフウ
    kフウさん、コメントありがとうございます。与作には二種類の与作があります。一つは木を切る与作、もうひとつは切らない与作。へいほうこーん、へいほうこーん。

    最初から、何もない。
    多分、そうなのだと思います。

  8. @nonya
    nonyaさん、コメントありがとうございます。
    その余白に素敵な詩を書き続けるnonyaさん。その詩はまた新たな余白を作って。

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