砂漠のサーモグラフ∞(インフィニット)

乾いた砂が泣いていた
誰もいないはずの地平で
ひと粒の涙が
ガラスのように
砕けた音がした

トカゲの背中を渡る風が
かつてここに
都市があったことを
記憶していた

白骨のようなサボテンが
両手を挙げて祈っていた
太陽は黙って
すべてを焼いていた

俺は水の幻を見た
昔誰かが笑っていた
その音だった

時間が溶けて
金色の残像だけが残り
風に巻き上げられていった

頭の上をゴーストバードが飛んでいた
ゆっくり ゆっくり
今度は
逆さまに飛んでいた

国鳥トキは絶滅した
野蛮なやつらが焼き鳥にしたせいで

霊鳥白鷹は見つけにくく
深い緑の森の奥にしか白鹿はいない
そしてそれは
アノニマスにも見つけられない

白鶴白鷹白鹿と呟いて
砂を噛み進む

砂漠のサーモグラフィー
生存者を写す赤青緑

ハッキングの導火線に蠍の毒
変色しながら
今見た幻を連れ去っていく

そして砂の下で
まだ息をしているコードがある
誰かの祈りを解読しながら
0と1の砂嵐を吹き荒らす

天を仰げば 死んだ星のノイズ
地を這えば Wi-Fiの亡霊
俺たちはもう
自然ではなく「自然のシミュレーション」の中で
日焼けした幻覚を見ている

それでもまだ
生きている熱は
どこかで脈打っている
たとえ赤外線の中でも
その鼓動は本物だ

ゴーストバードが戻ってくる
羽ばたきで砂が虹を描く
誰も見ていない
でも確かに光った

それは希望だった
絶滅のあとに咲いた
透明な花弁の名前を
誰も知らない

投稿者

東京都

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