アンデッド ver2
アンデッド(不死者)が一匹
廃墟を彷徨っている
強烈な空腹に苦しみ、目は赤く光る
地面には骨しかない
瑞々しい血の通う生き物がいない
苦しみは増す一方なれど
不死者は、死ぬことがない
人間であった記憶、理性は消え失せ
いつ、何処から来たのか
何処へ行くのか
何も思わず
ひたすら廃墟を巡っている
赤色の、透きとおった
海にも潜る
藻ですら見かけない
襤褸をまとい
遥かなる高峰にも登る
頂上で見つけたのは、白骨のみ
幾千度目の荒野で
アンデッドの驢馬と出会う
互いに喰い合うには
双方、孤独が長すぎた
驢馬と、驢馬に乗るアンデッド二匹は
地続きの赤く冷たい海を渡り
世界中の廃墟を巡る
依然として動くものは見ない
ある日、アンデッドの驢馬の脚は
もげてしまう
動けなくなった驢馬を前に
アンデッドは去らない
そうして
アンデッドは
驢馬が動かなくなるまで
共に過ごした
遺骸の上に土をかぶせ
三度、そこを回る
襤褸をまといしアンデッドは
この地を去った
人間であった頃の記憶が
甦る時もある
大きな戦争と
そのあとに起きたウイルス汚染
死体の山の中で目覚めたこと
最愛の人の笑顔と、抱く赤子の光景
襤褸をまといしアンデッドは
今日も一人
荒野を彷徨う
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