鈴虫

ご飯を茶碗によそり
雨が言葉になると
薄暗い都電は
速度を少し落とした
アナログの路面
壊れた手続きの
続き
途中、メキシコとの国境で
和歌山県の破片を拾う
和歌山県になりたい
そんな誰かの古い願い
いつか諦めた願い
どこにも進まない部屋の窓から
ご飯が一粒一粒こぼれ落ちる
外はきっと
約束された幸せで
満たされている
終点の駅が近づき
人々の足音に遅れて
鈴虫がやってくる

投稿者

コメント

  1. >どこにも進まない部屋の窓から
    からラストの締めまでが特にいいな、と思いました

  2. うちでのごはん粒(声)の団らんと、その外に家路へとひとたちが約束を持って歩いている
    どちらも続くと思っていることに今日も向かっているように感じました。

    鳴いてくれる鈴虫もあったかいカプセルに入って春の風景まで
    みててほしいなあ、なんて。

  3. @雨音陽炎
    雨音陽炎さん、コメントありがとうございます。
    どこにも進まない毎日ですが、たぶん国境を越えても心は留まり続ける気がしています。

  4. @kフウ
    kフウさん、コメントありがとうございます。生存競争の中で自分たちの季節を見つけた鈴虫には春の景色がどのように見えるのでしょうか。桜の花びらの上で、どんな音色を響かせるのでしょうか。
    もしかしたら、かつてそんな時代があったのかもしれませんね。

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