いつかあなたが
いつかあなたが
「木登りをしたい」と言ったら
「いいよ」と言うよ
わたしはすぐそばに立って
後ろに組んだ手は
すぐにでもあなたを抱き抱えられるよう
全神経を集中させる
*
いつかあなたが
「自転車に乗りたい」と言ったら
「いいよ」と言うよ
きっとサンタさんが家に届けてくれるから
そしたら練習しようか
後ろは振り返らなくていいよ
ママがいてるから
大丈夫
*
いつかあなたが
「学校に行きたくない」と言ったら
「どうして?」と聞くよ
どんな理由にしても
まずはあなたが
自分のことばで話せるように待つね
そのあとママの話すことも
少し聞いてくれるかな
*
いつかあなたが
「好きな人ができた」と言ったら
「おめでとう」と言うよ
それはあなたがまたひとつ
新しい感情を知ることになり
あなたをさらに素敵な女性にしてくれる
何が起こるのか
とても楽しみだね
*
いつかあなたが
「別れた」と言ったら
「何があったの?」と聞くよ
悲しい時はまず
その思いを口にして
涙が出てきたらむやみに止めずに
好きなだけ泣くのがいい
たくさんたくさん泣いてもいい
先回りすることは言わないし
諭しもしない
ただあなたがよければ
ぎゅっと抱きしめさせてね
*
いつかあなたが
「世界を知りたい」と言ったら
ただ黙って頷き背中を押すよ
あなたの見たい世界を
知りたい世界を
その目で
身体で
感じておいで
送り出したその日
わたしはきっと泣いてしまうけど
あなたは知らなくていい
いつかあなたも
知る日が来るから
それまでは
ただただ
自由を
その鼻先で
愛でて
いっておいで
*
コメント
ウチも小学生の娘がいますが、彼女との関係性には親子でありながら異性であることの隔たりがあります(時にそれは優位性でもあるんですが)。母と娘の繋がりには、どこか共犯関係のようなものを感じ、それは魂の繰り返しなのかなとも思います。きっと父には「好きな人ができた」なんて言ってくれないし、聞きたくもない!
とても大きな安心感を感じながら読めました。二連目の「ママがいてるから」で、この詩はイントネーションを関西に切り替えて読んだ方が味わい深い親子の会話になるなと読み直しました。
先日私に憑依したコテコテのおっさんではなく、さりげなく一行だけでその雰囲気を示されているのが印象的です。
優しくて、この詩が好きです。
なんて、なんてやさしくてつよいママの詩なのでしょう。
こころとからだが揺さぶられました。
トノモトショウさん、めちゃくちゃよく分かります、その父と娘、母と娘の関係性!
この詩に「きっとパパは聞きたくないだろうから」という幻の一文がありました^ ^
私は娘と友人のようになりたいとは思っていないですが(よく聞く「母(娘)は親友みたいな感じ!」は違うと思ってるひと)、やっぱり父側には言えないこと、言いにくいこととかは、こっそり聞いてクスクスしてみたい願望もあります^ ^
あぶくもさん、ありがとうございます!実は、、、特にそんなつもりもなかったのですが、私は生まれも育ちも大阪なので、こっそり出てきたのかもしれません^ ^
こしごえさん、ありがとうございます。うれしいです!^ ^
たちまこさん、すっかり丸くなった私です笑
見守る、ということがとても大事なことなんですよね。自分じゃないものはいくら目に入れてもいいほど愛しい者でもやはり自分ではないのだから、見守るその目が愛なのでしょうね。よい距離が持てるっていうのは大事なことだなって読んでてあらためて思いました。
愛しい唄が聞こえました
感動します