廃校
きみは壁に寄りかかる
重みを預けず
膝丈のスカートを翻す
窓に歩み寄る
校庭では学徒動員だ
祝祭の空気がさざめいている
彼が校庭を隻足で駆けた夜も
きみが片目で窓際から見つめた朝も
窓ごと溶け崩れ
羽交い絞めの教室で
画鋲のない書きぞめが
風に揺れる
耶蘇教の校内放送と
物理教師のチョークの軋みと
傾いだ十字架の囁き
忘れられない忘却が響く
躁鬱病の校庭に
幼馴染も烏骨鶏も網干しされ
羊水の風が吹き込み
祓われた喧噪が死んだのを見たか
彼らを追うことはできない
きみは 壁に寄りかかる
音楽教師みたく
信念に殉じて
生きることはできなかった
きみはきみで
死に絶え 孵化する 幾度も
横顔を喪ったまま
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