風は吹いている
濁り澱んだ現実の上辺を
絵皿の上で薄く溶かして
白い紙に線を描く
頭を占める雑音を忘れて
水彩で描かれた絵
透明な風が吹き
なびく夏草の記憶
見ている私を
憧れに満たし
あふれた憧れが
こぼれた先の明日は
型のくずれた服を着て
汚れた消しゴムで
力任せにこすったような日々
あの水彩画を思う
透明な風を感じたい
奇麗な世界に
小さな私を
ひとつ。書き足せば
輝く世界の中に
心だけでも止めておけるだろうか
立ち止まって
落とした視線に
くたびれた靴
埃っぽいつむじ風は
心に渦を巻き
カラカラと吹きつける
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