消去法

そうだった、そうだった
あなたも言ったっけ
もうぼろぼろじゃないか、って

自分がどこでこんなけがをしたのか
どうして誰も気付かないのか
なぜ痛くないのか

何も分からないんだ、とぼくは空を見上げて思った
喋り方を忘れた
それが言い訳かどうかすら分からない

世話を焼いてもらえるから
甘えているんだろう、とあいつらは言うんだけど
なんならそのせいで俺が死んでもあいつらを殺して善い気持ちだ

ぼろぼろだから助けたいのさ
ここへ来れば分かるよ
この薄汚い落書きだらけの路地の壁にもたれかかって月を見てれば

空の上に何があると思うんだろうな
希望なんてなかったから
死ぬことだけを考えている

せめても
俺の記憶がなくても
君が生きればそれでいい

遺伝子は俺達の記憶を遺そうとしてる、って言うけど
あれ嘘だよ
俺、俺が死んで忘れられた方がいいもん

君の記憶の中から俺が全部なくなって
俺よりもっと高い所へ連れて行ってくれる人と
幸せになって欲しいと思うもん

遺伝子は
消そうとしてるんだ
消去法だよ

間違ったものをさ
もうぼろぼろじゃないか、ってあなたも言ったっけ
ここで月を見てれば分かるよ

愛ってのは
覚えてる事じゃないんだ
忘れる事だよ

取り返しのつかないことが多過ぎるんだ
そして学ばないやつらの方が多いんだ
あなただってそうだよ、俺だってそうさ

いずれにせよ俺達はいつか死ぬ
この夢が終わるまで
ただぼんやりと生きているような気がするだけ

それならまだマシなほうだ
そのうち分かる
分からなくてもいい

産まれた時から要らないと思われてるやつなんて
皆そんなもんさ
運命だよ

投稿者

神奈川県

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