百合
また
旅支度を始める百合を
君は
止めるだろう
翼すら生えてくる百合のことを
君は笑って
シザーマンみたいに追い回しながら
留めるだろう
別になんのことはない
死にたいのだ
百合の目には死が映る
産まれた時から
男だったら
百合の足はきっと誰にも止められなかった
女だったことは
百合にとって幸福だろうか
ああ
旅に出れば死ねるのに
憧れに満ちた目で
空を見る百合の言葉を君は理解しようとしない
どの羽根を切れば飛べないか
何を言えば振り返るか
百合がどれだけ君を好きかみんな知っている癖に
百合はそれが憎たらしい
百合の吹いて飛ぶような軽い命がいう
俺がお前を殺さない理由はない
だって百合は死にたい
軽はずみに自分の死を望むようにきっとお前を殺す時にも躊躇いがないだろう
君は
何しているの
何かをしなければならないと思わせるような光が
見えるの、この世に、まだ
百合が窓を閉めない
夜が来ても
朝が来ても
太陽は満ち欠けをしないのかなと言ってじっと空を見ている
太陽は満ち欠けをしない
燃えて
燃えて
燃え尽きるだけだ
百合が何かを得心して窓を閉める
鍵をかけて
部屋の明かりを落とす
今日を終わらせると明日が来ることを知っている
君は今世界の神
百合にとっての宇宙
小さくて
とても頑丈に出来ている檻
百合はじっと腕の中を出ないでいる
ただじっと
君の目に映った何かを見ている
百合の目には映らない何かを
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