手袋
きっと持ち主に返るだろうと
花壇の縁にのせておいた
片方の手袋
今もブロックの上にそのまま
あの手袋は
いつまで花壇にいるのだろう
僕は手袋に執着している
知らぬ間に起こるであろう
喜ばしい光景に思いを馳せたが
そんなちっぽけな喜びさえ
僕は導けない
世界への僕の干渉など
無意味なのだ
余計なのだ
この程度の事で
己の存在価値が揺らぐのは
孤独な手袋の感化だ
ずっとブロックの上に取り残されている
あの手袋は
いつまで僕を捕まえているのだろう
今や共通の運命であると思っていたら
ふいに視線の先で起こった
喜ばしい光景に僕は知らず微笑した
手袋を取り囲んで
スズメのきょうだいが
首を傾げている
手袋をつついている
さえずり合って議論している
手袋をおいてけぼりに
僕の心は自由になった
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