浮華

君への想いが募る

天からは恵みの雨が降り
大地は優しく受け止める
まだ柔らかく頼りない命

誰も望まれて生きてなどいない

蛇の鳴く声が滑っていく
小鳥達はめいめいに光と遊び
時折きゃっと声を上げ
蛇に呑まれる

君は今何を考えているだろう

秘密の花園には頑丈な扉
その中で行われる逢い引き
私は一人声を聞いた気がする
若くて美しい女の嬌声

女はその言葉の意味を知りもしない

君に触れたいなと思う
夏の入道雲のたもとで
叩き付けるような雨に溶けながら

私は一人だったかもしれない
貴方以外のものが人でなくなっていく
空へ向けて伸びる翼は神の名をしていて

君に会いたいなぁ
呟いた私は地面の若草達に
押し上げられてふわりと宙を舞う
今どこにいるの、君は、仰いだ空の色

裸足にくすぐったい命
風が遊ぼうと両脇に絡み付く
羽ばたいて
羽ばたいて

花園の中の君は遠く
私の心の中には華があり
ねじれた世界で出会うことは
きっともう無いだろう
ふわふわと暖かい花の匂い
燃えるような紅い血の匂い

君に会いたかったなぁ
私はそう言って当て所なく
貴方に似たパン屑を探してさまよう
いつか貴方に辿り着けるまで

投稿者

神奈川県

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。