沈黙の子供たち

沈黙の世界で
また新たな沈黙が
産声を上げた
しかし
その音は沈黙の中では
決して響かない

誰も気づかない
痛みすらもない
ざらついたノイズの粒子達
宙に舞う灰も塵も
全てが無音のまま

行動原理を考える
無重力の音を体で聴く

しかしこの体では
到底耐えられない

さらに深く進む
干渉せずに進む
全てを差し出した後で
一筋の光を手に入れる
あの語り継がれた物語を
置き去りにされた時間が
一瞬で素早くリライトする

何という念の波だ
何という長時間

ブラックホールが
シュレッダーの如く

沈黙の世界をスライスしていく

細かく混ぜ合わさった
沈黙の春と夏と秋と冬
流砂の様に沈む
その重さで光が跳ねる
かつてあった音が鳴り
また新たな紐が作られ
触手の様な用心深さで
始まりに手を伸ばす
してやったら
やがて胎動が
沈黙を飲み込んでいく

子供たちは
沈黙の皮膚を破り
互いの輪郭を探っている
痛みはない
ただ 共鳴の圧がある
それが涙の原型

空洞の中で 声帯は震え
無数の宇宙の残響を
一度に吸い込み
吐き出す

発音の代わりに 閃光
言葉のかわりに 粒子
ひとつひとつが
名前を持たない命

沈黙が声を生んだのではない
声が
沈黙を

見たのだ

投稿者

東京都

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