仲間

鉛が固まっていた
 草原の上で固まっていた
 視線の先には、ブリキの工場

 今日、リストラされた
 工場から迫害された 
 だから、眺めていた
 鉛は眺めていた

 ニョキニョキッ

 腕が生えた
 脚が生えた
 首が伸びた

 スッ

 鉛は立ち上がった
 何か人間になれた気がする
 今までは分からなかったけど
 何か人間の仲間になれた気がする

 ヒュゥ~

 風の感覚は分からないけど
 風の気持ちは分からないけど
 風の顔は見えないけど
 風の仲間になれた気がする

 鉛は眺めていた
 ブリキの工場には、塊がたくさん動いていた
 ぼくを外した塊たちだ
 でも、何の感情も湧かない
 もう、彼らの仲間ではないから

 鉛は歩き出した
 草原には子どもたちが遊んでいた
 彼らの顔はまだ鉛では無かった
 天使の顔だった

 鉛は挨拶した
 天使は微笑んだ
 ぼくは嬉しかった
 何か仲間になれた気がしたから
 彼らの仲間になれた気がしたから

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