クリスマスローズ

たわむれに 詩を 説いている
朝日の差す 背の高い マンションの一室
朝四時から 同居人に起こされて
(ああ いつから 家族を
 同居人と呼ぶようになったっけ)

なんとなく 風呂に浸かる
そんなに広くない てんごく
お散歩で 鍛え上げた ふくらはぎを撫でて
今 わたし 裸なんだなぁ と思う
うろこの 一枚も 着てないんだなぁって

ハンバーガーの 小さなチェァ
同居人の趣味は最悪で というより
インテリアのなんにも 分かってなくて
それは 畳の部屋に サボテンを置く
みたいなことじゃなくて もっと 笑う

詩について なんて 本当はどうでもよい
指先で触れる コーヒーカップに張った 薄氷
そのうち 白鳥が 飛来しますよ
あなたが笑いながら 冗談だか 本気だか
分からないことを言う そうか この人も
詩人 だったなと 思う

精神病が 治るかどうかを賭けて
地球は マグマを 噴き上げるのだ
地球にもきっときちんと生まれ変わりがあって
やっぱり心があって
ラッキーボーイ
今日から君は世界になるんだ と書きつけて

讃美歌が 許すものを 許せなくて
自分って きっと 醜い生き物なんだろうな
実感もなく そんなことを考える
嗚呼 悲しいほど 暮れていくよ 空が
舌の上で溶けていく 絶望のかたち

死なないで欲しい そんな風に 潔く
容赦なしに 途方もない 夜の中へ
私達を 置き去りにしないで欲しい
Gmailの 受信ボックスに 遺言の返事が
連なって ツリー スレッド 全員に 引用返信
>>ぼく まだ 生きようと おもいます

寒空に咲いた クリスマスローズ
仕事のさなか たたずんで 眺める
私の背中が 男には小さく 女には大きく
幸せそうな 柴犬が 駆けていく
あの 柴犬だって 本当に幸せか 分からないさ

制服の 私が ぼんやりと 空を見る

投稿者

神奈川県

コメント

  1. こんにちは。

    >精神病が 治るかどうかを賭けて
    >地球は マグマを 噴き上げるのだ

    これとてもエネルギーにあふれていて
    素晴らしいと思いました。個の苦しみに対して地球規模で悲鳴を上げてくれるような印象です。

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