提灯お化けの憂鬱

あれよあれよという間に
世の中は明るくなりました
月のない夜の路地裏でさえ
光が届いているのです

提灯の明かりでは
最早、頼りないのでしょう

照らし出す電灯の下に
全てはつまびらかになりました
暗闇の神秘も畏怖も
影とともに消え失せたのです

闇の中に浮かぶ提灯では
所詮、道の先まで見通せないのでしょう

しかし、僕は問う

何もかもを明るみに引っ張り出したいですか
影の内さえ確認しないと気が済みませんか
そんなにも闇が恐ろしいですか

あれよあれよという間に
身の回りの光が消えました
宇宙からの点滅さえも
地上には届いていないのです

心許ない提灯の明かりなら
畢竟、何の邪魔にもならないでしょう

電灯は明々として
か細き光を消し去りました
暗闇に輝く光は
照らし出されては消えるよりないのです

ぼんやりと灯る提灯であれば
成程、闇を損なわないでしょう

敢えて、僕は述べる

影のあるところに光あり
闇の中に見出す光こそが道標なり
いわんや、闇夜の提灯をや

そう言ったところで
便利と効率を最優先事項としている時代に
僕のようなものは
役立たずも良いところなのでしょう
僕が居なくとも
さしずめ誰も困りはしない

提灯は去るのみです
暗闇の神秘と畏怖とともに

投稿者

大阪府

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