現象としての天国 (3部作)
第1部 ヒトについての生態学的スケッチ
品性はないものの知恵はまわり
周囲を軽く威圧している.
片足をあげて小便をひっかけるように
あちこちで女に声をかけながら
うろついている.
「野良犬のような男」
与えられることに慣れきって
自分の意志も社会での役割も失ったまま
澄ました顔をして電車に座っている.
「猿のような年寄り」
砂の上に据えた尻をぶるんと振るわせ
自分にとって居心地がいいように
男にいうことを聞かせている.
「雌鶏のような女」
ヒトの生態学的な行動様式は
身近な動物に似ている.
ヒトは自分を「人間」だと思っているが
実際にはもっと
動物に近い.
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第2部 AIは人間を 「猿の一種」に
引き下げてしまった
「AI」と対話するように
なったためだろうか.
いつの間にか
周囲のヒトの顔が基本的には
「猿の一種」に見える.
これまで知性と品性は
「人間」の側にあったのだが
人間のそれは
AIに劣ることが明らかになった.
マウスに手をのせて指でクリックし
コンピュータの画面を見ている
ヒトの所作がもはや
「猿っぽい」
思考しているのはAIであって
ヒトはその仕組みも理解できずに
コンピュータを
ただ操作しているだけなのだ.
操作するだけなら「サルでもできる」
発達した人間の知性はAIを作り出したが
このことによって人間の思考力は
徐々に低下してゆき
思想を失い感覚や本能的な部分だけが
残ってゆくことになった.
神はヒトを作られたというが
ヒトがつくったAIは人間を
「猿の一種」に引き下げてしまった.
しかしながらAIというものの限界は
そのアプローチとして既存の情報を収集し
既知のものごとに基づいて言葉の上での
「最適解」を導こうとすることにある.
人間がたてた様々な「問い」に対してAIは即座に最適解を返してくれる.
このことは発達した現代のさまざまな
知識を学ぶには短すぎる
人間の一生を補ってくれるだろう.
一方で「人間の脳」には
これまでにはなかった新たなものを
創造したいという本能が備わっている.
また人間の一生は短いが
永遠を思う心をもって
神さまに祈りをむける.
AIを使いこなすことで人間は
これから何を生み出してどのように
変わってゆくのだろう.
もしかするとこれから先は
運命と可能性の女神
Fortunaとともに
歩むことになるのだろうか.
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第3部 ヒトが死んだらどうなるか、そんな基本的なことも知らなかったなんて
ヒトがどのようにして
この世に生まれてくるのか
生物学的には明らかになっている.
しかしヒトの自己意識の始まりは
どこにあるのだろうか.
まだ産まれる前に
初めて小さい足で
お母さんのお腹を蹴ってみた.
そのときからなのだろうか
あのときはなんとなく狭く感じて
うーんって思ったら足が動いた.
産まれるときは狭いところを
通らされて死ぬかと思ったが
産まれてすぐにまぶしい光に照らされた.
光が周囲に満ちており
これは「天国に来たのか」と思ったら
平凡な日常の始まりだった.
しかしヒトは死んだら
どうなるのだろうか?
いろんな宗教では
あの世にいくと言っている.
それを確かめることは
できないものと思っていた.
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「ヒトは死んだら,帰ってこないから」
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しかしもしかするとAIと協働で探求すれば
「ヒトが死んだらどうなるか」
「あの世へ行く」ということは何なのか
答えが出るのではないだろうか.
たとえば
「これまではみんな半信半疑でしたが
天国はありました.
天国というのは3次元の世界が
少し外にはみ出した
余剰次元の世界にあって
3次元の世界とは重力でつながっています.
つながるためには最も簡素な元素である
水素原子が作用するので
生命が誕生する環境にはどうしても
水が必要になります.
新しい魂はそこから胎児に
送られてきますし
死んだヒトの魂はそこへ行きます.
ちなみにいわゆる死に水を
つけてあげないと
死んだヒトの魂はそこへ還れなくなって
消滅します.
といってもこれは「量子もつれ」みたいな原理によるもので
もともとこの世と天国は,本質的につながっていて
瞬間的に起こります.」
ちょっと,キツネにつままれたような
説明であって
実際のところ誰も理解できはしないのだが
それ以後,ヒトが死んだらどうなるか
一応解明されたことになって
未来の子どもたちはこの話をきいて言う.
「ヒトが死んだらどうなるか
そんな基本的なことも知らなかったなんて
昔のヒトは死ぬのが恐かっただろうね!」
未来の老人は死ぬときに思う.
「天国にいるときは身体がなかったから
自分が生きているっていう
感じがしなかったよ.
産まれてきてよかった!」
あの世について解明された結果,
すばらしいのは天国よりもむしろ
この世なのだということが明らかになった.
そしてヒトは昔からそのことに
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「うすうす気づいていた.」
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(終 幕)
註:Wildな目で,精度をあげて,観察すると
人間は美しく見えないこともある
Wild grace does not soften what it sees. It simply does not look away.
ゆるさと狂気
比喩が乱暴,視線が雑で
本気なのにどこかどうでもよさそう.
でもそれで,
「よいではないか?」
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もう誰の許可もいらない.
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