足あと

 ところどころ落ちないで黒ずむ
 天井のカビに
 忘れてしまってもよい事が
 大晦日の湯気にくもって
 かずかず浮かぶ

 いつのころからか
 足裏を丁寧に洗うことで
 気持ちもやすらぐようになった
 少し熱めの湯ぶねに身を沈め
 みつめていると

 あれは、つまらぬ思考をひき裂いた
 ことばの屑なのか
 天井にあやしげな星雲が宙のすき間の
 とてつもない奥行きから
 にぶい一条の光を射している
 かつての世からひとつづきの帯のような
 足あとを示されたみたいで
 途方もない

 ひとり者の夜は静かに更け
 手間かけて作ったお煮しめと
 熱かん一杯を母の仏前に供える
 和蝋燭のほのお

 玄関前に立てば
 西に叡山の稜線は陰り
 三井寺の鐘が湖景に溶けて
 戻らない一日の柔和な時間が
 手を合わす胸のうちで循環する

投稿者

滋賀県

コメント

  1. お久しぶりです、リリーさん
    お元気でしたか?

    年末、浴室の大掃除の光景が目に浮かんで
    天井に染み付いた黒カビから
    なにか、思い浮かぶものがあったのでしょうね

    浴室の天井の黒カビと、自身の足裏と
    掃除すること、洗うことの対比
    躰の汚れは落とすことが出来ても
    なにか、心に引っかかってる汚れというのは
    なかなか落ちない、年季ものだったりしますね

    少ししんみりとした、お正月
    それもまた、よし
    ですね

  2. @雨音陽炎
    さま
      こんにちは。お久しぶりです!元気にしています。^^
     お読みいただいてコメントをくださりありがとうございます。
     少し改稿をしてしまいました。大変失礼をいたしまして、申し訳ございません。
     自分でも捉えどころのないモヤモヤした気分を、どう表現したらよいのか
     二連目と三連目では悩みながら書いてみました。
     今年も地道に活動しながら何かを見つけられたらいいなぁ……と思っています。
     今後ともよろしくお願いします。

コメントするためには、 ログイン してください。