すみれの花
「すみれの花」
母は紫の帯が好きだった
ような気がする
母は演歌が好きだった
ような気がする
母は鰻が嫌いだと
ごまかしていたような気がする
母は時折
泣いていたような気がする
途切れ途切れの記憶の中で
私の母は出来ている
そして五年
確かな記憶のなかで
私の母は出来ている
母の言葉は壊れていた
それでも
家が欲しいね 家が欲しいね が
口癖だった
私の差し出すスプーンの粥を
嬉しそうに食べていた
七日間の穏やかな寝息の中で
母は目覚める事はなかった
母は幸せだった
ような気がする
月影に唄うすみれの花に
成ったような気がする
紫の帯を照れながら締めているだろう
ような気がする
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