店
うらぶれた町の中心の
やけに込み入った細い路地の一つに
その店は居を構えています
いつからあったのか
もう誰も覚えていない位昔から
元はとある宗教団体の
小さな聖堂だったと
町で一番の物知りの長老は言いますが
彼が生まれるよりも前に
既に店はそこにあったとのこと
悪魔が住んでいるとも
一度立ち入ると二度と出られないとも
二三百年前に失踪した子供が
年老いもせずにそこから現れたとも
噂は伝え聞こえてきますが
本当の所は誰にも分かりません
ただ一つだけ確かなことが
その店はこの世の死を扱っているのだそうです
明け暮れる日々に疲れた
泥まみれの手をした人々の為に
美しい末期の夢を売る
生き方を選べなかった全ての畜生
店の扉は開いています
そう微笑む青年が一人
聖書を片手に佇んでいるのだそうです
コメント
コメント頂けると嬉しいです。
どんな死が扱われているのか窓から覗いてみたいお店でした。
入ると自分も死になりそうなのでやめておこうかなって。
読後、ちょっと考えてみました。…このお店を覗いてみてもいいかな、という気持ちになりました。「死」は、たぶん生の裏返しではないんですね。じゃあ、何だ、と問われたら、わからないのですが。とにかく覗いてみよう。
たちばなまこと/Mさん
おいしいお茶とお菓子でお客を満足させてから、
片付けて夜寝る前に今日言えた気の利いた冗談を振り返る。
少しは笑ってくれたかな、と思いながら瞑目する。
マニアックな個人経営の雑貨屋みたいなお店だと思います。
あえて客引きや広告などはしないのでしょう。
コメント有難うございます。
長谷川忍さん
生きていたいという人には絶対に見付からない所にあるのです。
逆にそんなものを売られたら困りますからね。
自分にとっての最良の死とは何か、考えて貰えるのが店主の幸せ。
どんなに邪悪な思想を持った人でも、その夢は春の草原のように爽やかだそうです。
何を望んで死を探しているのか、私は入ってしまうと思います。
コメント有難うございます