くすのし

頭上にあった太陽から紐が垂れてきて 
紐の先端には引っ張りやすいようにと
結び目がついていたので 引っ張る
太陽は割れて 中から「おめでとう」と
書かれた垂れ幕が下りて 紙吹雪が舞う
俺は空腹を感じることもなく立ち尽くす

オチのない妄想に 世界はつきあってはくれず
垂れ幕は撤去され 紙吹雪は箒で掃かれ 
太陽は定位置に戻され 人々は仕事に向かい
駐輪していた自転車には違反切符が張られる

なにもなかったかのように 動いている
なにもなかったのだから 仕方がない

俺は違反切符を引きちぎり丸めて捨て
錆で表面処理された自転車にまたがり
なにもなかったかのように走り出すけれど
手の中には結び目の感覚だけが残っていた

投稿者

茨城県

コメント

  1. その瞬間には世界がその人のものでありそれが永遠に続くかのような錯覚をもつほどの目出度いことがあったとして、例えばノーベル賞を取ったとか、しかしそれほどのことでも時間が過ぎると、割れたくす玉の掃除はなされ、人々は去り、忘れ去られるものなのです。現に私たちはノーベル賞を取ったりオリンピックで金メダルを取った日本人の名前を言えるでしょうか? 私は数人しか思い出せません。割れたくす玉はあとかたも無くなるのです。ただ本人の手の中には確かに結び目の感触が残るという、そこら辺も上手いですね。

  2. この感覚、すごくわかります。
    それをこういう風に言語化して詩作品になって良いなあ。

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