事象の地平線

四角い広い木の床の大空間の壁際にパイプ椅子が数十脚並べられ、目撃者は三々五々に座ったりしている。入口扉付近に受付用の長机があり、中央にグランドピアノが据え付けられている。まず、水城から挨拶があり、ピアノの椅子に座り、音の流れを奏で始めた。

 自然のせせらぎ
 ゆるやかなメルヘンの谷川
 やがて襞のある白いドレスが
 何かに まれたり 引きずられたり
 不規則なステップで走り回り
 時の息吹を吐き出しつつ
 鼓動つよく
 幸せな
 とろけた笑みで 黒い衣が四つ足で
 猫的に愛嬌を振りまき、撫でられたりする
 発せられる言葉の振動は
 人間の声が事象の地平線を語りだす
 イベントホライズンは死の世界ではない
 死という事象の入口
 中有・そら―仏教では四十九日の間をいうが
 だれも行って戻ってきた生身の者はいない

 白は脱ぎ捨てられ黒になる
 美しい肢体が炙りだされる
 四肢の躰、ときに女鹿
 黒いドレス生地は言葉の躰
 白いドレスは時の躰
 爪弾くものは肉の躰
 
 水城ゆうのほとばしる音の泉と
 矢澤実穂の洗練された魂身の迸りと
 変幻自在の声のシンフォニー、
 野々宮卯妙は張りのある中音・こっけいな裏声・の
強靱
小さき声
黙契
 生と死
ユタカ
イメージ
70分分の永遠の地平線

投稿者

神奈川県

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