こぐまのむすこ~バス運転手~

こぐまラーメン店入口に張り紙があった

しばらく貸室募集

亭主の自家用自動車は
介護会社の車にかわり
亭主の姿も見なくなった

裏の物干し場には
男物しか吊り下げられなくなった

張り紙が剥がされ
介護ヘルパーの案内がガラス窓に書かれた

こぐまラーメンの角を曲り
店の路地を渡ろうとすると
いつも同じ路線バスが
右折しようと停まっている
信号が変わると
横断歩道を渡るわたしには
曲がるバスの車内がよく見える
運転手がひとりハンドルをまわす
車内に客は――
透かしてみる
車内に客は――
ひとり
今朝は一人も乗っていなかった

しゅくしゅくとハンドルを切る運転手
彼はこぐまラーメンの息子に見える

たまに
二人乗っているときがある
そんなとき、わたしは大いに喜び
気分がいい

客の有無を確認するとき
すでにハンドルを大きく切った
運転手の顔は見えない

バスの後ろ姿が
気配を消してゆく

投稿者

神奈川県

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