トイレトレーニング

 だれか聞いているかも知れない
 生垣の外へもれる声
 まぶしい青芝に浮いている
 コハクチョウは伏し目がち

 わかい母の呼びかけに
 首を振り雌鶏の様に小走る女の子
 縁側にそろって顔を出す
 祖父母からも宥められ
 浮きねの鳥になっていた
 コハクチョウの背に跨ってみる
 便意を我慢してしまうクセのついた子が
 しぶしぶ浣腸されて気張って出した
 数十個もの鹿の糞

 ちゃんとお通じがあれば
 祖母からご褒美をもらうようになって
 サイコロ型で紅白の箱に入った
 大粒のミルクキャラメル
 これに、共働きの母は困ってしまう
 お菓子を食べたがるクセのついた子の
 乳歯は奥歯が溶けてしまったのだ
 腸活に励む中年になっても
 そんな話を覚えている

 還暦を過ぎて独り身のまま
 「老いることが不安だから」と
 知り合いの男性は婚活を続けている
 わたしもどんな老境に入るか
 わからないけれど
 介助を受けながらでも自立排泄が出来れば
 何よりのよろこびだろう

 将来はベッド傍にポータブルトイレが
 寄り添う事になってもソレを
 遥かな時を超えて現れた
 私のコハクチョウの化身だと思いたい

 

投稿者

滋賀県

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