
見習い魔術師
くれぐれもご用心されたしと
モノクルの奥から琥珀のような目を光らせ
銀色の猫は忠告したというのに
僕はついぞ忘れてしまっていたのだ
こんな重大なことを
新月から一日目の夜
爪の先のような月の下で
僕は瓶の栓を抜いてしまった
立ち上る紫煙は
そこら中に広がり
制御の術も効かぬ
闇雲な魔法の発動は
この森の木々を紫に塗りかえ
天上まで到達した煙の名残は
三日月の端をも紫に染めた
言わんこっちゃないと
モノクルの奥で琥珀のような目をすがめ
銀色の猫は舌打ちした
僕は面目なく項垂れてしまった
こんな失敗をやらかすなんて
十五夜までの連夜
今や盆のようになった月の縁を
僕は真綿で磨いている
立ち上がった紫煙の
煤の汚れは
そんじゃそこらじゃ落ちぬ
ヘマをした魔法の始末として
木々の紫はようやく取り除けたが
この月に残った最後の煤は
どうやっても拭い切れない
致し方なしと
モノクルの奥の琥珀のような目を煌めかせ
銀色の猫は魔法をかけた
月の煤の部分には
今宵も薄雲が呼び寄せられた
やれやれ!
長い長い梯子を下りてきた僕に向かって
銀色の猫はふんと鼻を鳴らした
新月までに
すっかり綺麗にしなけりゃ
僕は田舎に帰ることになるかもしれない
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