
続 見習い魔術師
いささかの失敗は
小手先の魔術で何とかなるし
重大な失敗も
何やかやで収束される
今回の失敗とて
そう気に病むことはないのだ
前回の失敗とて
慌てふためいた割に事なきを得た
力加減を誤って
三日月の先をぽきりとやってしまった時は
心臓が凍り付く思いをしたが
モノクルの奥で琥珀のような目が見開かれたのみ
銀色の猫は月を修繕し
煤の汚れの問題も同時に解決を得た
故に今回の失敗とて
僕が恐れる程には重大ではないはずだ
何せ、
雨粒に対する重力の加減に作用しただけだから
空中に漂うモノクルのような水滴の群
銀色猫は長い尾で厳しく弾いていたが
相当怒って見えたのは僕の気のせいだろう
僕は流れ星を降らせたかったのだ
どこをどう間違えてしまったのか
僕本人でさえ分からない
炭酸水の中に沈み込んだように
泡の如き水滴が満ちている
銀色の猫の毛皮に
いくつもの露が宿っている
僕の髪も同様であろう
このままでは風邪をひくかもしれない
このことに気が付いて
僕はにわかに慌て始めた
忙しく肩の水滴をはらっていると
モノクルの奥の琥珀のような目をぎゅっと瞑って
銀色猫はつむじ風を起こした
やれやれ!
水滴を巻き取った風は
窓から飛び出して行った
さながら虹色を映すシャボン玉の群れ
吹き去る風の中でちらちらと光輝いていたが
青空に飲まれ
直に見えなくなった
魔術の余波で
今宵はいつもより星が降るかもしれない
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