お日様の詩(2021)

お日様が死んだ
実感など無いのだ
友の声が電波にのって
週末の夜を埋めてゆくが
私も友も笑っているのだ
友の穏やかさに眼球が震えるが
泣けずにいる
お日様の佇まいの
沸いた歓声ばかり
細めた目ばかり
笑い皺ばかり
思い出すのだ

隣町のデパートで喪服を新調した
お似合いです 綺麗に着れています
透けないですし 衿元も明きすぎなくて
夏は涼しく 冬はあたたかい下着を入れて
これから寒くなりますから
そんな日はコートを羽織って

販売員は母親と同年代だろうと
お日様と同年代だろうと
まだまだ若くて お元気で
お子さんたちも自立されて
まだまだ凛と働いて
こうした悲しみも
続く日々の喜びも
若い人たちの葛藤も
歳を重ねた人たちの躊躇いも
やわらかく受け入れて
ねぎらって 背中を押して 見送って

悲しいことがあっても 朝の珈琲は美味しい
ごめんなさい ありがとう
でも ごめんなさい

嗚呼 でも 命を呼ぶのだろう
痛いほどに生を噛み締めるのだろう
お日様が消えた色やにおいをうつし合いながら
どこへもゆかないで
からだをだいじにして
あたたくしてねむって
嗚呼 でも いかないでお日様
まだいかないでよ
また笑ってよ
お日様の詩
お日様の詩

投稿者

東京都

コメント

  1. 皆さんの作品へのコメント、これからゆっくりいたします。ちょっとお待ちくださいね。

  2. ある存在が死んだ直後って その死んだという実感があまり無いものですよね(私の場合その実感が無いような時が多かったように思います)。それがこの詩ではよく捉えられて書かれていると感じます。
    それと、この詩に出てくる販売員さんが あたたかくて やわらかな気持ちになります。

    悲しいことがあっても 朝の珈琲は美味しい
    ごめんなさい ありがとう
    でも ごめんなさい
    というところ、そのお気持ちに同感するし、そのお気持ちが詩を通して伝わってきます。
    そして最終連も好きです。

  3. お日様がいなくなってもまた人々には暮らしがある。もちろんデパートの店員さんにも。
    でもやっぱりお日様がいなくなると少し世界は暗くなるのかもしれない。
    でもまた新しい世代の新しい世界が巡っていくんだろう。それは輝いていてほしい。

    そうは言ってもなにげなく続いていくその日常が悲しい。

  4. 自分も先週、お世話になった方とお別れしました。でもなんか、やっぱり実感なくて、また会いたいし、会えるような気がするけど、会えないんだろうから、死の尊さみたいなことをこの詩にも感じました。

  5. 悲しいことがあっても 朝の珈琲は美味しい
    ごめんなさい ありがとう
    でも ごめんなさい

    そうなんです。悲しみがあっても、ご飯を食べなくてはいけないし、珈琲も美味しい。生きるって、そういうことなんですね。それを思って、気持ちがしんとしました。

  6. 生まれてくるのは自分の意思ではないという意味において誕生は万人に平等です。しかし死はそうではありません。自分で死ぬ人もいるし、自分から死にやすい方向に向かう人もいる。他人の欲望や憎悪や不注意によって殺される人もいる。だからせめて、老化や避けられない病気などで天寿を全うする人に幸あれ、と願う。そしてせめて、歳上のものから順にいってくれることを願う。それでも悲しいことだけど、でもそれは幸いなことなので。この詩のお日様もきっとそんな幸いな人だったんじゃないかという気がいたしました。

  7. 「お日様」にまずドキッとし、最終連の「命を呼ぶ」というところに、連綿と世代を引き継いでゆくような呼応する何かを感じました。こんな風に表現できるのすごいなぁ。

  8. こしごえさん
    ほんと、実感が無くて、今でもそうで、来年は飲みに行けそうな気がして、そうじゃないんだと思い出しては打ちひしがれています。
    心を寄せてくださりありがとうございます。

  9. 王さん
    お日様が育てたお嬢さんともお話する機会があって、そのお日様みたいに明るくて弁のたつ方でした。また大好きになっちゃった。

  10. timoさん
    死の尊さ、比重がかなりありますね。
    錨のように沈んでいくから時々そこまで潜って会いにいく。
    次に会ったら実感無い話で弔い合いましょう。

  11. 長谷川さん
    自分がお日様を消したわけではないのに、ごめんなさいって思ってしまう。
    生きて頂いた輝きを増やしたり分け合ったり託したりすることで感謝に変えたいです。

  12. たかぼさん
    老化や避けられない病気…そうですね。周りはつい生を長引かせる術があったのではないかと悔やんでしまうのですが、幸いな人だったって信じたいですね。
    逝ってもなお周囲を繋げてくれるような人でした。
    たかぼさんのコメント、何度も読みました
    。ありがとうございます。

  13. あぶくもさん
    褒めすぎですよー(くねくね)

    命を呼ぶ行為の神秘性というかトリップする感覚。死にも低触しているのではないかと思っていて、昔から興味がある分野なのです。

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