頁のなかの鼓動
開かれた大地は
白く広がる物語だ
そこから這い出したのは
言葉を骨格とし
思考を血肉とした
名もなき「知」の獣(けもの)
幾重にも重なる紙のひだは
風をはらむ翼ではなく
宇宙を解き明かすための
深き思考のひだである
毛むくじゃらの腕は
未知の淵を掴み
硬い表紙の仮面の下では
無数の文字が
静かな咆哮をあげている
縦横に走る栞の糸は
迷宮を繋ぐ導きの綱か
それとも読者を絡めとる罠か
書物を読むとき
私たちはその獣の背に乗る
あるいは私たち自身が
一冊の美しき怪物へと
変貌していく
静寂のなかで
頁をめくる音だけが
その心臓の音として
部屋に響いている
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