未遂の夜
サイケ花盛り前夜のラバーソウルのジャケットを大胆にあしらったわたしのド派手なTシャツを着たあなたのお腹のあたりつまりアイドルを脱ぎ捨てたばかりの4人のとりわけ静かな兜虫の首元から滑り込ませたわたしの右手がポールの右目あたりに差し掛かった内側の柔らかな肉感の頂に触れた矢先のあなたの情念の横笛を今まさに吹かんとするヨギーニよろしく深く吸い込まれたかと思うと少し間があってそのまま今度は弾むように吐き出されてくる呼吸がまた次の瞬間にペースを上げて吸い込まれようとしている様を見ながらわたしはさてはこれはガールのサビの間のアレを真似ているのだなつまりそれはアレと同じような心地なのだなと理解するかしないかのうちにこの世界がぐるりとひっくり返って頭の上に落っこちてきてシーツの中でぺちゃんこになってこと切れてしまっても悔いはないというかむしろそうなってしまいたいとさえ本気で願ったまだこの世で四半世紀を生きたあたりの何も成し遂げていない自分のさらに成し遂げられなかった夜から明け方にかけての弱い記憶はあまりに鮮明で互いの心と体をその場の空気の振動にまで伝えあって感じ取っていたのだろうけれどもその後半世紀にいたるまでのうのうと生き続けることになろうとは思いもよらず夢のまにまに人生を終えてしまったような錯覚に陥ったほどの気持ちを書き記しているのだとしても嘘もまこともすべてが曝け出された白んだ朝にそれでも震えが止まらなかった理由とあなたが去ったあとの部屋に充満しているこの上ない生命の安堵の匂いを忘れることなどついぞなかったのだからいつか骨だけを残し光の粒々となってまたそこかしこに飛んでいくまでの残りの道程をもう四半世紀か半世紀かいやあと数日だったりするのかそれは神のみぞ知るであろう生命を互いに輝かせて行こうではないかと語りかけていたのかわたしは。
コメント
ああ、これはたまらんなあ。言葉が暴走していくけどちゃんと脈絡はあって、タイトルに立ち返ると未遂の夜の感情の昂りを抑えられない感じが見事に表現されている。終わり方も秀逸で、グッときました。
かっこよ!
すごい好みです。
さまざまなところが浮き立って見えました。
あぶくもさんの、一気に読ませる筆力に感動します。読んでいる最中に(こころの)浮遊感も味わえました。すごいです。
私も光の粒々になれたらいいなぁ、と思います。^^
疾走感がありますね。最後まで、一気に読ませる。
何も成し遂げていない自分のさらに成し遂げられなかった夜から明け方にかけての弱い記憶はあまりに鮮明で互いの心と体をその場の空気の振動にまで伝えあって感じ取っていたのだろう
ここのフレーズ、とくに好きです。
確かに四半世紀頃というのは人生の最大のピークでしょうが生きていくのは幸運でしかないので幸運に恵まれ続けばそれに近いピークは何度か訪れるに違いないのだけれど年月は加速度的に過ぎていくのですべてが夢物語のように感じられるかもしれずそういったゆく川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず感が句読点の無い文によって上手くあわらされているように思いました。
>トノモトショウさん
たまらんとか言うてくれたらほんま嬉しいです。
>たちまこさん
お好みに合いましたか。
突然出来上がりました。
>こしごえさん
そんな風に思ってもらえて光栄です。
光の粒々はいつからか私の生死のテーマです。
>長谷川さん
いつも素敵な箇所を見つけ出してもらって伝えて頂けるのが本当に貴重な経験だなぁと思ってます。
>たかぼさん
感想が、、、一気読み‼️(笑)