マジックアワー
幕が降りたあとの、ほの暗い光の中。
「W」のかたちをした、小さな舞台で、
道化師は、まるい溜息を
ひとつ……またひとつ……
そっと、宙へ放り上げている。
頬の模様は、描かれた嘘なのか。
それとも、こぼれた本音なのか。
白と黒の市松模様を、かすかに揺らしながら、
彼は、重力の記憶を手放そうとしている。
宙を漂うのは、七つの願い。
受け止めては投げ、投げてはまた受け止め、
落ちればただの石ころになってしまうから、
彼の手は、止まらない。
止められない。
遠くの手拍子は、もう届かない。
左右のリボンだけが、風に揺れて、
静かに「さようなら」を描いている。
それでも――
見えない喝采が、夜を満たすその時まで、
彼は、かなしみを空へ浮かべ続ける。
やさしい魔法が、ほどけてしまわぬように。
知らない誰かが言う。
「今日の夕焼けは、特別にきれいだったよ」と。
コメント