たびびとは唄わない

めを瞑り
たびびとの唄をきこう

花を摘む子供たちのうた
ブッシュの陰のけものの死骸のうた
月の影をながれぼしが横切ったうた

おんなたちは何度もくりかえし
互いをいたわりあうだろう

細長い巡礼道では
花面をつけたわかものが
あいてかまわずだきつき
一瞬でたねをうえつける

だからたびびとは
唄をこころの底のこばこにしまい
行先なく急ぐ

すぐに帰ると出て行ったのに
たびびとは
炉から立つむらさきの煙になって
ひとすじの渦をまく

もう唄をみることはない
もう夢をきくこともない
金色のことりもこたえない

だからめを瞑り
刻んだ神話をくりかえし
互いをいたわりあい
おんなたちもやがて消える

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