アオキヶハラ
ただの森だった
鬱蒼と繁る樹々の合間から
陽の光が線状に差し込んでいる
湿った土に苔が生えていて
手探りで歩くには少々心許ない
種類のわからない鳥の声が聞こえて
姿を探してみるがどこにも見当たらない
誰かが歩いた跡はあるので
草を掻き分けるほどではないが
道と呼ぶにはいささか不安定である
奥に進めば進むほど
捨てられたペットボトルや
片足だけ残された靴など
残留物がちらほらと見つかる
空気がだんだんと重くなるのを感じると共に
景色が薄ぼんやりとしてくるのに気付く
ある瞬間からそれは瘴気のように身体に纏わりつき
噂や都市伝説などではない死の雰囲気というか
何人もの自殺志願者のネガティブな意識の集合体が
頭の奥の方に忍び込んでじんじんと痛みに変わる
もはや前後左右の感覚がなくなり
自分がどこにいるのか何をしているのか
そもそもの動機すら曖昧になっていく
屹立する枯木の各々に千切れたロープが垂れ下がっていて
踏み台となるような小さな椅子や梯子が散乱している
白骨化した遺骸などが見つかるかと思ったが
意外にもそんなことはなかった
私は用意してきた麻縄を
身長より数センチ高い枝に掛け
輪のように括り付けて強度を確かめてから
自分の首に巻き付けた
ちょうど台になるような岩の上に立ち
覚悟を決めて足を投げ出した
そうして私が最後に見たのは
ただの森だった
コメント
カタカナにすると面白いですね。
私は死後にこの詩を書いているのか?となるところが更に面白かったです。