コオロギ

「コオロギ」

少年は空を見上げていた
青春という林を抜けて大人になった
幾つもの山を越えて
穏やかな草原にたどり着いた

草むらのコオロギが横柄に聞いてくる

どこに置いてきた まっすぐな瞳を

老人の耳には届かなかった

褪せた夕日を背に
灰色の影が伸びてゆく

影の先にあの頃の空が在るはずだと

後ろ姿に羽音が揺れた
秋の先には冬しか無いのにと

老人は見つけた

それは額縁に飾られた春の輪郭だった

投稿者

長野県

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