
物語
夕刻の中
虚を身体に潤ませ
黙っている
あなたは揺れている。
ようやく寒さが薄れ
苦くなってきた。
虚は、虚のままに
あなたの指先まで満ちてくる
それを隠しもせず
試すように
わらってみせた
あの日の表情。
三月は
あなたの誕生月
いなくなってしまったたしかな姿を
幾度もすくい上げながら
私は実を生きる
生きるしかない
世間のさなかを
虚との狭間を。
人と人は
時に合わせ鏡だ
あなたと合わさったことで
私には何が生まれただろう
何が残ったろう。
日が長くなった。
物語を少し
作ってみたくなった
九段坂を歩いている。
季節を、うしなう。
コメント
都々逸 日本良いとこ一度はおいで 二十四節気 四季の国 らどみどら
それにしても 最後の1行、詩人ならでは落としかたで、真面目になれました。
梵天丸もかくありたい
@足立らどみ
足立さん、長く生きてきましたので、現実、虚構、さまざまなことが自分の中に絡み合っています。そこから言葉を繋げていきます。写真は、九段坂から眺めた皇居の濠です。
とっても心に染み入りました。人と人は合わせ鏡。虚は虚を映し、それでも笑う向かい合わせの姿は、自分自身の反映なのかもしれませんね。物語を少し作ってみたくなった、という最期の一節が創作者としての感覚に寄り添っていて、とても素敵に響いてきました。
@ザイチ
ザイチさん、人と関わることは、多かれ少なかれ合わせ鏡で自らを見ることなかもしれませんね。そして自らに反映させる。…それが同時に相手を見ることにも繋がっていくのかな。
正直全部なのですが、特に三連目と四連目が胸にぐっと迫ってきて
まだ余韻が続いています。
何度も読みたくなる、そんな詩をありがとうございます!
季節を感じながら
季節を失っていく・・・とても深いです。
実生しては失いつづけ、あなたを感じながら虚しくもなる
相反するもの=合わせ鏡 を人は感じながら
季節が回ってくるたびに気づかされます。
写真の色味がとても好きです。
@草野まこと
草野さん、ありがとうございます。実と、虚、二つの狭間にあるものを、最近よく考えます。その答えはわからないのですが、…わかりようもないのですが、自分なりに書いてみました。
@kフウ
kフウさん、写真は、九段坂から眺めた皇居の濠です。この少し先に千鳥ヶ淵があります。桜の名所。まもなく桜が開花しますね。季節の巡りの部分を読んでくださり、嬉しく思いました。…実は、そこをあまり意識していなかったので、指摘をいただき、あらためて、読み直してみました。