ツバメの遠足

いつもの通勤電車
流れ行く見慣れた景色を
見るともなしに眺めていると
気づけばツバメが並走している

つり革につかまったまま
少し身をのりだして確認したところ
くちばしの先には
空豆のように小さな風呂敷包み

僕の前に座る女の子が
決然たる態度で立ち上がり
窓を開けるや否や
ツバメは見事な旋回で
窓の隙間をくぐり抜け
車内へと舞い込んだ

ぴよぴよぴよ!

にわかに騒がしくなった向こうの網棚では
綿毛のようなヒナが十羽程身を寄せあっている
一羽が黄色い口を開け
残る皆は頑なに口をつぐみ
銘々足元に小さな風呂敷包みを抱え込んでいる

網棚にもう一つ
風呂敷包みが置かれると
鳴いていたヒナは澄ましかえり
親鳥は身を翻して
開いたままの窓から
外の世界へ飛び去った

こんな若葉目映い日和には
ツバメの子どもも遠足なのだ

慣れ親しんだ作業というように
女の子は窓を閉めると
背筋を伸ばして座席に腰掛け
さっきからずっとそうしていたように
電車の振動に身をまかせている

投稿者

大阪府

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