ミサ ― 聖者は野辺へ

ミサ ― 聖者は野辺へ

黄金の吐息が、夜明けの霧を一枚ずつ、静かに剥いでゆく。 そこに三人の石の巡礼者が佇んでいた―― 数世紀の沈黙を骨に鋳込み、 霜の外套を肩にかけたまま、 伏せられた瞳の奥で、ただひとつの「兆し」を待っている。

足元には、白き花々が果てしなく、大地が凍てつく暗がりから絞り出した、無垢な祈りの粒子となる。 一輪ごとに夜明けの洗礼を浴び、 いま一斉に――その透き通る内側から――光を紡ぎだす。

逆光が彫りあげるのは、岩肌の鋭い稜線。 冷たい影が刻む溝の底で、 石はいつからか、祈ることを忘れた祈りの形をしている。

ここでは時間が、自らの足音に気づき、息を殺す。 一筋の光が世界という書の背に挟まれ、 頁は静かに、閉じてゆく。

霧の中を、振動だけが伝わってゆく――音になる手前の何かが。 私たちはただ、この白い「肯定」の中に根を張って立つ。 石は花となり、花は光となり、 光は、名を持たない沈黙へと、ゆっくり溶けてゆく。

投稿者

静岡県

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