優しい人
横断歩道に置いた人
唇を噛んで捨てる人
小さな空で死んだ人
ピアノの黒鍵を嫌う人
ゴミ袋の中でもがく人
指先の季節風を弄ぶ人
転がる前に転がった人
鮮やかな叫びを紡ぐ人
何処かで佇んでいる人
いつまでも消えない人
詩に負けた人
罪深い空間を無造作に切り抜く人
崩れゆく街で滑稽な愛を探した人
蛍光灯が照らす全ての物を拒む人
魚の味を纏う人
無機質を呪う人
卵を産む人
柔らかい人
塗り潰す人
恥を掴む人
優しい人
優しい人
とても優しい海で眠る人
とても優しい嘘に沈む人
とても優しい歌を歌う人
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.043: Title by ちほ]
コメント
いろんな人がいますね。
連の右端を揃えながらも短い行の言葉選びにトノモトショウさんらしいクールなセンスが光っているなぁ。
「優柔不断」って言葉もあるし「優しい人」の裾野はとてつもなく広いです。「あなたは優しい人だ」なんて言われて喜んではいられませんねw。4
詩に負けた人
この一行に、どきりとしました。…詩に負けてしまうことが、時々ありますので。
すごい感覚が押し寄せてきますね。優しくしずんでいく空間の途上の、あちこちに優しい人たちが切り取らて絵画のように、静かに微笑んでいるよう。とてもとても癒されました。
すみません。「いつもここから」の「悲しいとき」を思い出してしまいました。そして心の中で「やさしいとき〜」「罪深い空間を無造作に切り抜くとき〜」とか言いながら読み返してしまいました。それもありかなと思いました。
「本当の」優しさとは 何なのか どういうことなのか、と この詩を読んであらためて思いますが、思えば思うほど ぐるぐると分からなくなります。しかし、本当は、優しさってすぐ近くにあるのだろうと この詩を読んで思います。
そして この詩では、あくまでも 優しい「人」なんですね、人。ああ、いろいろな優しい人が居ますね。うん。
この詩の優しさに感謝します。