初夏池上詠

詞書(初夏)
初夏のころ、池のほとりに歩み寄り、
水の面に映るひかりの深さに心とどめ、
咲きそめし花の契りを思ひつつ詠める。

長歌
水の面に
しづけさ満ちて
影ゆらぐ。
朝のひかりに
睡蓮そよぎ、

闇の底より
清き息のぼり、
深きこころは
ひそかに開く。

岸の辺に
白きかるらゆり
風を待ち、
水のいろどり
あはれと見れば、
立ちてぞ思ふ。

園の声
君を思はせ
風にまどひ、
花のさそひに
心ほどけて
遠ざかりぬる。

薄紅の花
沈む思ひを
ただ見守りて
立ちとどまりぬ。

呼びかけむ
声もいまなく、
君なきを
嘆くしづくは
水に落ち、
音も立てねど
影はゆらぎぬ。

池は抱き、
風はただ吹き、
空はただ見て、
花の契りを
夕べしづかに
呑みほしぬ。

反歌
君去りて
水の面くもる
夕まぐれ、
声なき泣きの
影ぞ沈みぬ。

風に揺る
かるらゆりこそ
知るらめや、
深き心の
底のさびしさ。

投稿者

東京都

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